ステントグラフトとは

身体への負担が少なく、安全で長持ちする
胸部大動脈瘤の治療
カスタムメイドステントグラフト

2012年の大動脈シンポジウム@NY

胸部大動脈瘤は、心臓の近くの血管にできる瘤の一種で、破裂すると突然死につながります。
日本の患者数は平成20年時点で1万3900人に上っており、高齢化とともに増加しています。(出所:厚生労働省)
ステントグラフトは、この病気に対する最新の治療法です。

 

 

 

 

大動脈瘤というのは、人間の血管で一番太い大動脈に瘤ができて、破裂すると死んでしまう怖い病気です。

 

 

でも、逆に言うと破裂しなければなんでもないという大したことのない病気でもあります。
ガンのようにほっておくと確実に手遅れになる病気ではないのです。

 


大動脈瘤が破裂する確率は大体直径6cmの場合で年間10%程度といわれています。
つまりほっておくと、1年で10人に1人の方が亡くなりますから、これは危険です。だから前もって手術して治療しましょう、ということで外科手術が行われています。
大動脈瘤の治療は、50年ほど前から動脈瘤ができた部分を人工血管に取り換える外科手術が行われるようになりました。
その後、身体への負担を小さくするために、20年ほど前からカテーテルを使ってステントグラフトというバネのついた人工血管を大動脈瘤の前後に内張りするという方法が加わりましたが、胸部大動脈瘤は頭に血液を送っている枝の近くにできることが多いので、人工心肺を使用して一度心臓を止めて行う開胸手術が今も主流です。

 

 

手術を前もって受けた場合はどうなのでしょう。
動脈瘤の手術のなかでも身体への負担の大きな胸部大動脈瘤の場合、胸部外科学会のホームページによれば待機的な外科手術で、4.9%の方が病院で亡くなっています。また解離性大動脈瘤(慢性大動脈解離)の場合は6.2~6.6%もの方がやはり退院できずに亡くなっています。
更に言えば、例えば日本で一番多くの胸部大動脈瘤手術を行っている神奈川県の民間病院の成績でも、学会発表によれば慢性大動脈解離患者の手術後1年生存率は88.7%まで下がるのです。
1年間という期間で考えれば、10人のうち9人は普通に生活できていたはずの人が、手術を受けて痛みや苦しさと戦い、 それでも20人に1人は退院すらできずに亡くなる。さらに、手術の後遺症が残って元の生活に戻れない方がどれほどいるのか、 想像してみると恐ろしくなります。

 

 

大動脈瘤手術が予防的な治療である以上、患者さんの身体への負担は最小限でなくてはならないと考え、この20年間、ステントグラフトの開発と手技の改良を行ってきました。
1990年代にステントグラフトを手作りで始め、2000年代には企業と協力して国産唯一のステントグラフトを開発し、2013年に健康保険の適応を得ることもできました。しかし、企業製のデバイスは汎用性を求めざるを得ないため、その性能には限界がありました。
そして、その後も研究を続けた結果、2017年には、完全なカスタムメイドで患者さん一人ひとりに合わせたステントグラフトを作成する方法を確立しました。
しかしながら、企業のサポートが得られないため、どんなに良い方法であってもなかなか世の中に広めることは難しく、現在、普及活動を行っています。

 

ステントグラフト親父のカスタムメイド日記
日々の治療の実際、学会活動などについて書いていきます。個人的な意見も遠慮しないで書くつもりです。

 

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